‡‡‡ Do you understand?‡‡‡

 

 

 

 


私には、私の『保護者』だと名乗る人が4人いる。





「誰も貴様等には頼む気はない」
「金のことばっか考えてるような奴等に渡せるわけねぇじゃんっ!」
「人を物のように扱う方々に何かを言う資格なんてないんです」
「今一番必要なものがなんなのか全然分かってねぇぜ、あんた達」


「「「「俺(僕)達が、の保護者になる(なります)」」」」



両親と兄弟。
大切な存在が、交通事故というモノによって、あっけなく消された。
その通夜の席で、資産家だったらしい父親の遺産の話が出て、その相続人になっていた私を誰が引き取るかでもめていた。
一度に大切な人達を亡くしたショックと、身内の浅ましさに、私は言葉を失い、ただただ泣いていた。


そこへ、彼等が現れて、口々に言うだけ言って、私の『保護者』になってしまっていた。



『誰も貴様等には頼む気はない』
こう私を守るように、私の前に立って言い放った人は、私の家の向かいに住む、玄奘三蔵。

『金のことばっか考えてるような奴等に渡せるわけねぇじゃんっ!』
私を腕に抱き込みながら叫ぶように言ったのは、三蔵の家に居候している、孫悟空。

『人を物のように扱う方々に何かを言う資格なんてないんです』
薄っすらと笑みを浮かべて、冷たく言ったのは、私の家の右隣に住む、猪八戒。

『今一番必要なものがなんなのか全然分かってねぇぜ、あんた達』
長身を活かす様に、親戚一同を見下しながら言ったのが、私の家の左隣の、沙悟浄。


4人とも私が物心付いた時には側にいた人達。
いつもいつも、兄みたいに私達兄弟と遊んでくれていた。



それがいきなり『保護者』という存在になったのが………今から3年前。
現在、彼等は私の『保護者』兼、私の『学校の先生』になっている………。



あれから3年。
私は現在高校2年生。
あと少ししたら3年生なんだけど。
私が今の高校に入学が決まると、それまで別々の学校の教師をしていた4人が、いきなり私が入学する年から、同じ学校へと転勤。
しかも1年の時の担任は八戒で、今は悟浄…。

裏でなんかしてるっぽいんだけど………聞くと笑顔で返されて教えてくれやしない。

まぁ、でも。
明日からは修学旅行っ!
しかも沖縄っ。
担任の悟浄は仕方がないとして、他の3人からはちょっと解放されるわけだしねぇ。






って、思っていたのに………………。






「なんで4人ともいるかなぁ?」
観光バスの外を流れる、澄んだ青の海を見ながら思わず呟いてしまった。
「え?なんか言った?」
隣に座る友達のがこっちを向いて聞いてくる。
「ううん。大した事じゃないよ。ただね………」
そっと向ける視線の先…。
先生達が座る座席。
普通、1台のバスに2人くらいの先生。
それが、1台のバスに4人の先生。
はっきり言って、今この4人を見るのは至難の業。
バスが前のめりになって走っているんじゃないかって思えるくらいに…………女子が前の座席に座っている4人の先生に集っていた。
餌を集る鳩のようだぁ…。

「なぁ、。カードやらねぇか?」
後ろの座席にいた男子が私の頭をつついて誘ってきた。
確かに次の場所までそれなりに時間があるって言ってたし…。
景色もいい加減見飽きたしなぁ…。
「うん、いいよ」
「じゃ、こっち来いよ。やり辛いじゃん?」
「OKOK〜」
通路側にいた友達を跨ぐ様にして通路に出て、後ろの座席に行こうとした時、体のバランスを崩してしまった。
原因は、バスの急ブレーキ。

「うわっ?!」
「げっ、っ!!」

前のめりに倒れるのならまだ身体を支えられるけど、後ろ向きってのは…無理があるんだよね。

男子が私に手を差し伸べるけど、届かないし。
もぅ、無様に倒れてやるわよっ!!

って覚悟したら、ポスッと力強い腕が私を抱き込んでいた。

「あっぶねぇ〜…。むやみに立ってんじゃねぇっての」
「…………悟浄…先生…」

抱き込まれた状態のまま、見上げれば、ホッとした表情の悟浄がいた。
いつの間にあの群れの中から出てきたのか…。

「………先生、ガイドさんが困ってるよ。フォローしてあげなよ」
いつまで経っても私を離そうとしない悟浄に、実際困っているガイドのところに行くように言う。
ガイドさんも大変だよ…。
カッコイイ4人がいて、ラッキーかと思えば、生徒は話し聞かずに前に集まるし、喋るし、うるさいしっ。

「あ〜しょうがねぇなぁ。っと、おい、コイツに手出すんじゃねぇぞ?」
って私を解放して前方へ戻りつつ、私を誘った男子生徒に言葉を投げた。


「………ねぇ、って先生の何??」
友達が面白そうに聞いてくる…。


その科白…今まで何度言われたか…。



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「これからフェリーに乗って、島へ渡ります。フェリーに乗っている時間は30分程度です」
フェリーに乗って30分かけて行く島で何をするのか………。
サイクリングだそうです。
沖縄に来てまでチャリに乗るとはねぇ…。


「ん?…あ、八戒先生」
修学旅行の行程に愚痴を心の中で言っていたら、八戒が近くに来ていて、私を呼んだ。
「大丈夫ですか?」
「え?何が?」
、船弱いでしょう」
言われて気付くあたり、私って…。
八戒が心配そうに私を見ている。
心配してくれるのはいいんだけどさ。
八戒って…隣のクラスの担任だったよね…。
さっきも私達のクラスのバスに乗っていたし…。
担任としての責務、果たしてないでしょう?

「私を心配するより…八戒先生のクラスの子、心配したら?」
「いえ。僕は教師である前に、の保護者ですから」

えっと…。
言い切られてしまいました…。
ここまできっぱり言い切られてしまうと…何も言えない…。
「…だ、大丈夫。フェリーってあまり揺れないって言うし」
八戒を安心させるように笑顔を見せて答える。
はっきり言って、八戒のクラスの女子の視線が全身に突き刺さって、こっちの方が心配だっての。
「そうですか…。気分悪くなったら遠慮なく言ってくださいね?」
私の頬に手をあてて、そう言うと、名残惜しげな瞳を私に向けて、
「それじゃぁ、僕は仕事してきますね」
と言って、ようやく自分のクラスの生徒が待つ方へと歩いていった。


あの最後に言った科白、若夫婦みたいだ…。
って言ったのは、友達。
敢えて言わないでいたんだけど、私…。



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フェリーが出港して間もなくして、3年の体育を担当している悟空が両手にお菓子を抱えるようにして来た。
3年はもう授業がなくて暇だから着いて来たって言ってたけど…。

っ、食うか?」
「え゛っ?…私に太れというんですか…悟空先生…」
「ちっげぇーよっ!貰ったからさ、にも挙げようと思ってさ」
とか言いつつ、既にお菓子の箱を開けて中身を食べているし…。

悟空って、私服着てなかったら先生だって分かんないよねぇ。
制服着てたら生徒と同化するって、絶対。
でもそれが悟空の人気でもあるみたい。
すっごい気さくに話せる先生だって。


「ぁ、何?」
外をぼんやりと眺めていた私に、悟空が呼びかけた。
振り向くと、目の前にイチゴポッキー…。
チョコの掛かってない方を悟空が口に咥えて……………なぬっ?!
「ちょ、ちょっとっ、アレを今ここでやれと言うのっ?!」
「昔はよくやったじゃん」
口にポッキーを咥えたまま、器用に話す悟空…。
「……アンタってばっっ」
またしても隣に座っている友達が、さすがに今度は驚いた表情で見てる…。
なんかすっごい誤解されてないっ?!
「誤解してるようだから言うけどっ!悟空先生は、私の保護者っ!保・護・者なのっっ!!」
Do you understand?!
って思わず英語で言いそうだっ!
「んな事分かってっからさ、早く食えってば」
相変わらず悟空が器用に咥えたまま言うし…。
…………………。
なんで友達止めない?
面白がってるな…。
「しょ、しょうがないなぁ…」
あぁ、痛い…痛いぞ、視線。
でもね、悟空って意外と決めたら引き下がらないからね…。



パクッっとチョコが付いた方を私が咥える。

ポリポリポリ…と悟空も私も少しずつ食べていく…。

ポリポリポリポリポリ………ボキッ。



「……あーーーっっ!!途中で折るなよっ!!」
「……………いいじゃん。私だって命欲しいもん」
口の中にあるポッキーをもぐもぐさせながら、叫ぶ悟空に言う。
誰がこの公衆の面前でポッキー端食いキスなんてするもんかっ!



「ねぇねぇ。のファーストキスの相手って誰?」



友達の鋭い質問に、思わずポッキーが器官に入っていって、思いっきり咽た…。



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?」
友達の不思議そうな声。
「あ〜ちょっと海見てくる」
そう答えて私はデッキへと出る。
沖縄とはいえ、まだ季節は海水浴が出来る時期じゃないから、外はちょっと寒い。
だから皆フェリーの中にいる。
デッキにいるのは数人。



「はぁ〜…………………………酔った………」
フェリーだから大丈夫だと思っていて、すっかり薬を飲んでおくのを忘れていた。
頭がグラグラするし…。
う〜ん………。
「酔ったのか」
質問でなく、確定しているその口調。
思わず反抗したくなるって言うのが…高校生ってもので…。
「酔ってないよ〜、三蔵先生」
振り向いて三蔵を見れば、沖縄の日差しにキラキラ光る金糸の髪。
はっきり言って、憎たらしいほど、この風景に似合っている…。

だいたい一番この場にいる理由が不明な人がこの人。
1年の数学を担当、しかも担任までやってる人がなんでここにいる…。
しかも1年は今現在、学年末の試験中だよ。

理由、聞いたさ、さすがに。

そしたら、
『副担がいるんだ。俺がいなくても、どうとでもなる』
っていう科白が返ってきたのには驚いた。
副担ってそんな役割と違うしっ。


「はぁ…」
気持ちの悪さで思わず溜息を吐いてしまった。
「チッ…何遠慮してやがる」
「遠慮って…」
何か言い返したくても、気持ちが悪い方が勝って何も言えない。
うぅ〜〜…気持ちわるっ。
「こうしていれば少しはマシだろ…」
そう言って、近くに備え付けられているベンチに三蔵が腰掛けて、その膝の上に私を横抱きにするように乗せて労わるように抱きしめた。
マシとかどうとか言う前に………。
「着くまで寝てろ。無理なら目を閉じているだけでも構わん」
全く私の意志を無視して、三蔵がそう呟くように言いながら、私の目を覆うように手を乗せてきた。

「…………三蔵先生の手って…相変わらず冷たいねぇ…」
それがなんだか心地いいなんてのは言わないけど。
「くだらねぇこと言ってねェで、寝ろ」
「いや、寝れないし」
「だったら黙っていろ」
「はぁ〜い…」
私が不貞腐れたように言うと、三蔵が私の頭をそっと自分の胸に寄せるようにした。

本当に…三蔵って…見かけによらず、すっごい優しいんだよね…。

三蔵の心音と、手の心地よさに、うとうとし始めた時。



「…………お前………………熱あるじゃねェかっっ!!!!」



突然の怒号。
一気に眠気もすっ飛ぶよっ。


いやね、環境が変わると熱が出やすい体質なのよ、私。
だから、誰かに言う必要ないって思ってたんだよねぇ…。
だけど、三蔵にばれてしまって………えぇ、凄かったです。
三蔵の声に悟浄がまず慌てて来て、私を三蔵から奪うように抱き上げて、額くっつけて熱を測り…。
八戒がタオルを濡らして私の額に乗せ……悟空が、フェリーが岸に着くまで、手を握っていてくれた…。
目を薄っすら開ければ………私を見下ろす、4人の心配そうな顔…。



私は死に際の人間かっ?!?!


4人とも過保護なのよっ!!
だいたいねっ!
後でちゃんと熱計ったけど、微熱よ、微熱っ!!




37度ジャスト。




あぁーーーっっ!もぅっっ!!!




………………………。






私のファーストキス、返せェぇぇーーーーーっっ!!!!!!










END

キリリクで逆ハーを頼んだ所、こんな面白いものが?!

今は連載化なので続きが楽しみです♪続きが気になった方は、リンクから飛んで見てください☆